Romantic Mistake!
抹茶の湯呑みをギュッと握りしめる。なんなのこのワガママな人は。お礼が言えないあたり、ボスよりもひどい。怒鳴り付けてやりたい気持ちをグッと抑える。
「桃香さん、困るよ。今さら開催を取り止めることはできないんだ」
「あら、颯介さんたら私のお願いを聞いてくださらないのね。私はいつも優しい颯介さんが好きなのに。冷たいわ」
ダメだ、もう我慢できない。
ガン、と音を立て、湯呑みを置いた。ギロッと桃香さんを睨み付けると、彼女は「な、なんですかっ」と言い返してきたが、私はそれを蹴散らすように反論を始める。
「優しい颯介さんが好き? なにを言ってるんですか。一度した約束を簡単に破って、こんなに困らせて」
厳しい口調でそう言うと、桜庭さんは「仁科さん?」と焦っている。うしろにいる秘書さんもおそらく同じで「ちょっとちょっと」と口を挟もうとする声がする。でも、私はもう止まらない。
「こちとら楽しみにしてた旅行をキャンセルしてあなたのワガママのためにここまで来たのよ。ありがとうのひとつも言ったらどうなの! だいたい、パーティーくらい、御曹司の婚約者なら嫌々言ってないで出なさいよ」
「なっ……なっ……」
「私も、桜庭さんも、作家さんも、あなたのために必死になっていたの。それを優しいからだなんて言葉で簡単に片付けないでよ! あなたみたいな思いやりの欠片もない人なんて、桜庭さんの婚約者失格よ!」