Romantic Mistake!
ハァ、ハァ、と私の息づかいだけが響き、和室の中はしーんと静まり返った。ふん、言ったぞ。そう思ったのもつかの間、うしろから秘書の方がヨロヨロとやって来て、「いや、桃香さん、今のは彼女が勝手に言ったことで……」と死にそうな顔でご機嫌をとろうとしている。
そっか、どうしよう……こんなことを言ったら余計にパーティーに出てくれなくなっちゃうに決まっている。私ったらなにやってんの!
「あはは……なーんちゃって」と今さらごまかしてみるが、桃香さんは怒りに震え、目に涙を浮かべていて、もう遅い。
「ひどいですわ。私これまで、そんな失礼なことを言われた経験はございません」
「す、すみません……」
肩をすぼめ、申し訳ないと思っていますというポーズをとってみたが彼女は許してくれず、私が横に置いていたコートを睨み、桜庭さんの方へすり寄ってく。
「しかもなんですの? この汚ならしいお洋服。こんなものを持って街を歩けるなんて庶民の方々の感覚は理解に苦しみますわ。言葉も身なりも汚ないなんて。ねえ、颯介さん?」
私はカッと顔が熱くなり、むき出しになっていたコートを机の下に寄せて隠した。急いでいて気にしていなかったけど、たしかにこれは恥ずかしい。コートだけではなくて、桃香さんの艶のあるの髪と上質な服に比べたら、全速力で走ってきた私の身なりはボロボロだ。