Romantic Mistake!
やるせない感情がドッと押し寄せ、悔し涙を必死でこらえる。
ああ、なんだか悲しい。お金も時間も楽しみも削られたのに、みじめな庶民はお嬢様の小間使いにされていただけだったのか。がんばってここまで来たのに、どうしてこんな仕打ちを受けなきゃならないんだろう。
ダメだ、泣いてしまう。そう思ったときだった。
「……桃香さん」
そうつぶやいたのは桜庭さんだった。彼は腕に絡みついていた桃香さんの手をパッと払い、これまでとは一変した冷たい顔で彼女を睨み付けている。
「颯介さん?」
「きみのどんなワガママも叶えようと努力してきた。でも、仁科さんを傷つけることだけは許せない。そんな失礼な女性とは婚約を続けられないよ」
彼の低い声に胸がドキッと高鳴る。それに、なんで今、私の名前が出てきたのだろう。 同じことを思ったらしく、桃香さんもポカンと口を開け、私と桜庭さんを見比べ始める。
「え……え? 颯介さん? 今なんておっしゃったの?」
「きみとは結婚したくないと言ったんだよ、桃香さん。親切にしてくれた人に感謝もできない女性は、お断りだ」