Romantic Mistake!
私は桜庭さんの意外すぎるクールな一面に思わずときめき、ああスッキリ!と心の中で盛り上がったが、隣で秘書さんが死にそうな顔になっていることに気づきハッとする。これまずいんじゃないかな。これからパーティーがあるのに破談になってしまった。しかも、たぶん私のせい。
「さ、桜庭さん……すみません、私、余計なことを……」
オロオロと腰を浮かし、立派な座布団から下りて畳に膝をついた。反省を表しうつむく私に、正面の桜庭さんはクスッと笑う。
「どうして謝るんです。僕は、そのコートを持ったまま必死で走って来てくれた仁科さんに感動したんです。買い換える暇もないほど急いでくれたのだと。優しいあなたを罵倒する桃香さんが許せませんでした」
「でも、破談になってしまうなんて」
「しかたがないです。彼女と結婚できないと思ったのは事実ですから、破談するしかありません。お見合いで知り合い、そのときはワガママな部分はあっても素直な女性だと思って婚約に応じたのですが。今回のことは受け入れられません。これでいいんです」