Romantic Mistake!
本当だろうか。絶対に、大変な事態になる予感がする。それに、桃香さんの捨て台詞も引っ掛かかる。
「お取引も決裂だ、と言っていましたが」
どこのご令嬢だか知らないけど、私のせいで桜庭屋の経営が傾いちゃったりしたら、もう、お天道様の下を歩けない。そんな私の不安を察したのか、桜庭さんはさらに明るい笑顔になった。
「ああ、安心してください。桃香さんは少々勘違いをしているんです。彼女の会社はたしかにうちの取引先ですが、力関係としてはこちらが上ですから。今頃、彼女のお父上が一番焦っているでしょう」
彼の言葉にホッとしたが、横からまったく安心する様子のない秘書さんがヌッと現れ、「なに考えてるんですか部長……」と低い声で唸る。
「小野さん。そう怒らないで」
桜庭さんは手をひらひらさせて簡単に答える。秘書の男性は小野さんというのか。彼はこれまで我慢していたものが爆発したかのように、桜庭さんの耳もとまで寄って怒鳴り散らす。
「これが怒らないでいられますか桜庭部長! 破談にするなら後から理由をつけていくらでもできますが、今日のパーティーをいきなり中止するのは体裁が悪すぎますよ!」