アオハルの続きは、大人のキスから

 
「よし、頑張る! 頑張るしかない」

 久遠と俊作から逃げてしまった翌日。すっかり熱は下がった小鈴は、午後からベリーヒルズショッピングモール店にて仕事に励んでいる。

 はっきり言って空元気だ。頑張ったからといって、すべてが報われるわけでもない。この年になれば、嫌でもわかることだ。

 しかし、今の小鈴には〝頑張る〟これしかない。仕事を頑張る、自分磨きを頑張る、そして――久遠のことを諦めないことを頑張る。

 こうなったら開き直ってしまえ、というのが小鈴が導き出した答えだ。

 これから久遠とどうなっていくのかは、まだわからない。プロポーズを受けたとして、彼の親族が小鈴を歓迎してくれるのかも未知数だ。

 それでも、やっぱり久遠を諦めることはできない。それが、小鈴が導き出した答えだ。

 彼の傍に素敵な女性がいるのは、これはもう仕方がない。魅力溢れる人に近づきたくなる気持ちは小鈴にだってわかる。それでも、久遠の一番近くにいる異性は自分でいたい。

 我が儘なことを思っているのは、百も承知だ。それなら、もう開き直るしかない。

 久遠が好き。大好き。その気持ちだけは、誰にも負けないよう前に進むだけだ。

 ふと、店の奥でパソコンのディスプレイを見つめている俊作に視線を向ける。

 昨夜のことがあり、俊作と顔を合わせづらかった。だが、小鈴への対応はすっかりいつも通り。頼れる番頭といった感じで、胸を撫で下ろした。

 あとで時間を作ってほしいとお願いした小鈴に、俊作は穏やかな表情で頷いてくれた。

 形はどうであれ、俊作の小鈴への気持ちは本気だったと伝わっている。だからこそ、誠意ある対応をしたい。小鈴はそう考えている。

 反物を巻きながらそんなことを思っていると、店に客が入ってきた。


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