アオハルの続きは、大人のキスから


 久遠のことが好きだからこそ、離れなくてはいけないのかもしれない。
 ギュッと唇を噛みしめたあと、小鈴は久遠を見上げた。

「私は、どなたとも一緒に歩むつもりはございません」

 久遠と俊作。二人に向かって勢いよく頭を下げる。

「ごめんなさい」

 俊作の手を振りほどき、小鈴は雨の中を駅へと向かって走り出した。

 二人が駆け寄ってくることに気づいたが、ちょうど赤信号に捕まったようでこれ以上は追って来られない。

 大通りを流していたタクシーに手を上げ、すぐさま乗り込んだ。

「……浅草の呉服屋山野井まで」

「はい、浅草ね」

 タクシーの運転手がチラリとルームミラーを使って小鈴を見たあと、ゆっくりと車を発進させた。

 遠目に長身の二人が見えた。だが、すぐに視線をそらす。今はもう、無理だ。

 今から叔父の元に行き、呉服屋山野井を継ぐことは無理だと頭を下げてこよう。

 もし、それでも無理強いしてくるのなら、山野井から離れる覚悟をしなければならない。

 大恩人である叔父には恩返しをしたいと常々思っていた。だが、この一件はどうしても無理だ。小鈴の心には、久遠がいるのだから。

 とはいえ、久遠の傍にいる自信もなくなってしまった。彼には、先ほどの女性がバックアップしてくれるはず。そうすれば、久遠はもっともっと高みを目指せる。

 胸が軋んで痛む。この痛みは、どうしたら和らぐのだろうか。


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