アオハルの続きは、大人のキスから


「これは、タブーじゃないか? 小鈴の良心を揺さぶるやり方を、お前のような男がする必要があるのか?」

 小鈴がこの場を立ち去ったのを呆然と見ていた俊作に、久遠は食ってかかる。

 殴り飛ばしたい気持ちは多々あるが、グッと堪える。暴力で解決する問題ではないからだ。

 今、俊作を殴ったとしても、小鈴は喜ばないし、彼女の心の痛みは晴れないだろう。
 久遠は俊作の腕を掴み、怒りに震えた。

 俊作のやり方は、間違っていると思う。親を亡くして途方に暮れていた小鈴に、手を差し伸べたのは彼女の叔父夫婦だと聞いている。小鈴にしてみたら、彼らに恩を感じているだろう。

 そんな彼らに俊作と結婚して山野井を継いでほしいなどと言われたら、悩むに決まっている。

 俊作のやり方に怒りを覚えるのはもちろんだが、久遠は自分に対しても怒りを感じていた。

 小鈴は大恩人から打診されたとき、どんな思いだったのだろうか。小鈴のことだ。久遠に相談しようとは思わなかっただろう。なにもかもを自分で解決しようとしていたに違いない。

 小鈴はきっと今も久遠のことを好きでいてくれる。それは、彼女の眼差しや態度を見ればわかっていた。

 そんな彼女を速攻我が物にしたいと思う気持ちを抑え、考える時間を与えたのは小鈴自身の声で、言葉で考えで久遠の胸に飛び込んでもらいたかったからだ。

 それに、結婚ともなれば色々と考える時間も必要だろう。そう思ったからこそ、ひと月時間を作ったのだ。

 それなのに、小鈴は違う問題も抱えていた。なんとなく、なにかに悩んでいる雰囲気は感じとっていたが、久遠との未来について考えているとばかり思っていたのだ。


< 91 / 120 >

この作品をシェア

pagetop