箱崎桃にはヒミツがある
 治療が始まるとすぐ、
「……痛いのか」
と貢が訊いてくる。

「いえ。
 今回も前回も全然痛くないです。

 でも、これから痛くなるかもっとか、先生の手が滑ってなにかの惨劇がっ、とか妄想の翼が羽ばたいてしまって」

「羽ばたかせるな」

 ……はい、と言っているうちに、手際の良い貢は治療を終えていた。





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