箱崎桃にはヒミツがある
「いつものとこなら大丈夫じゃない?
 ま、終わってからでもいいわよ」

 まあ、ショーのときはとれかけててもメイクさんがちゃんとやってくれるしな~、と思いながら、桃は来島と別れた。

 自宅に戻る途中で、いつも、まつげバーマをやってもらっているお店の前を通った。

 どうしようかなーと足を止めていると、
「なにしてるんだ?」
と声が聞こえてきた。

 貢だ。

 何故、此処に……と思ったが、ベリーヒルズビレッジの近くまで来ていたからだろう。

「お疲れ様です」
となにがお疲れているのかわからないが言ってしまう。

「いや、まつげパーマかけようかどうしようか迷ってて」
緑青(ろくしょう)色のクラシカルな看板のかかった店を見上げると、

「まつげパーマね」
と貢がちょっと笑った。

 小莫迦にされているように感じる。

 ……いや、気のせいかもしれないが。
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