箱崎桃にはヒミツがある



 貢は自分には縁のなさそうな店の前で、桃とどうでもいいことで揉めていた。

 まつげパーマと歯医者、どちらが嫌かという話だ。

 歯医者の方が痛くないのに歯医者が嫌いとはどういうことだ。

 俺が嫌いという話か?
と貢の中で話が飛躍してしまう。

 桃は貢の目の前で、歯医者の怖さとまつげパーマの嫌さについて熱く語っている。

 ……こんなすっとぼけた奴が大きなファッションショーでランウェイを歩くとか。

 不安しかない、と思っていた。

 このときまでは――。





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