箱崎桃にはヒミツがある
「や、どうもどうも貢くん。
今度の見合いはよろしく頼むよー」
とショーのパンフレットを手に言う桃の父、兼久に貢は、にこやかに挨拶された。
桃が言った通り、ショーの席は兼久の隣だった。
「いやあ、どきどきするねー」
と笑う兼久は桃と全然似ていないようで、何処か似ている。
人の良さそうなところかな、と思ったとき、会場が暗くなった。
一瞬、ざわめく。
が、すぐに音楽が流れ、ショーが始まった。
……どきどきねえ。
身内じゃあるまいし、と思ったが、ランウェイを颯爽と歩いてくるモデルたちと同じように桃が出てくるところが想像つかず。
確かにハラハラしてしまう。
桃のおばあちゃんが言うように、フラフラして出てきて、ころん、と落ちてしまうのでは、と貢はランウェイだけに光が当たっている会場で、落ちてきた桃を拾いに行くシミュレーションを何度もしてしまう。