箱崎桃にはヒミツがある



 やがて、治療が始まったが、貢はすぐに手を止め、桃に訊いてきた。

「痛いのか」

「いいえ」

 その言葉に、貢は治療に戻ったが、またすぐに、

「痛いのか」
と訊いてくる。

「いえ、別に」

「じゃあ、なんでこの世の終わりみたいな顔してる」

「いや~、痛くなったらいけないので、先に苦悶(くもん)の表情を浮かべておこうかと……」

 苦笑いした桃が言い終わらないうちに、貢が尾藤を振り向き言った。

「尾藤さん、メス」

「だから、メスいらないですよね~っ」
と桃は叫ぶ。




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