極上御曹司に初めてを捧ぐ~今夜も君を手放せない~
彼の話に素直に頷けばよかったのだけど、いろいろ疲れていて余計なことを口にしてしまう。
「北條さんとか滝川さんとかはモテそうだから」
「それはどうも。ずいぶん高く評価されたものだな」
北條さんの皮肉にマズいと思って謝る。
「……すみません」
もう言い訳も思いつかない。
しゅんとする私を見て北條さんは溜め息交じりに命じた。
「梨乃、乗れ」
へ?梨乃?
首を傾げる私に彼は穏やかな声で告げ、腕時計に目をやった。
「もう仕事は終わった。今からお前は俺の妹だよ。いいから、乗れ。もう駐車場に着いて五分経っている」
「はい」
とりあえず返事をして車に乗ってシートベルトをするが、隣に部長がいるというのが落ち着かない。
やっぱり後部座席の方がよかったな。
うちのアパートまで一時間はかかる。
そんな長い時間彼と密室にいることに耐えられるだろうか?
これが本当にお兄ちゃんなら、家まで寝てられるのに。
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