極上御曹司に初めてを捧ぐ~今夜も君を手放せない~
「藤原、すごく困った顔してる。カーナビに住所入力するから教えて」
北條さんの言葉にギクッとする。
私ってそんなに顔に出てるのだろうか。
「国分寺市西恋ヶ窪五丁目です」
北條さんはカーナビに住所を入力すると車を発進させた。
シートは革だし、見るからに高級そうな車だ。
「部長、車好きなんですか?」
何か話そうと思いついたことを口にしたら、彼は正面を見据えたまま返した。
「まあな。その部長とか北條さんとか言うの、会社にいない時はやめろ。仕事を思い出す。優でいい。俺もお前を梨乃と呼ぶから」
絶対に無理。
それにしても北條さん、兄との約束を守るなんて律儀すぎるよ。
適当に聞き流してくれればいいのに。
「ちょっと……待ってください。そんなの無理ですし、兄の頼みなんて忘れてください。部長に迷惑はかけたくありません」
私になりに気を使ったつもりだが、彼は嫌味なくらい冷淡な口調で言い返した。
< 46 / 243 >

この作品をシェア

pagetop