【短編】俺達の事情
「…ちがうの」


「なにが?」


「大貴くん…卒業してないの」


「へ?」


「まだ童貞のままなの」


「ハイ!?」


どーゆー事!?


俺は首を傾げた。


「あの日、私がお酒飲ませたせいで大貴くん、ダウンしちゃったでしょ? 家まで送ろうにも家しらないし…大貴くん、酔いすぎて寝ちゃうしうちに連れて帰って介抱しようと思ったんだけど…」


先生は困った顔でこちらを見た。


「私、散らかし症なうえに片づけができなくって…」


ち、ちらかし症ってナニ?
制服が肩からズルリと落ちた。


「そんな部屋をみせるわけもいかなくて、ラブホに…」


「じゃ、じゃあ何で俺はパンツ一丁だったんだよ!?」


「それは、大貴くんが苦しそうな表情してたから〜…脱がしてあげただけ。 他はなんもしてないよ!」


「ほ、ほんとに?」


先生はコクンと頷いた。


そうか…そうだったのか。
保健室が散らかっていたのは全部先生のせいか。


「じゃあ、先生は俺を助けてくれただけか…。 ごめん、怒ったりして」


「いいのいいの、私もちゃんとはじめに言わなかったのが悪いし」


そういえば…確かに、何で言わなかったんだろうと思った。
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