【短編】俺達の事情
保健室の先生
俺は家に帰って飯を食っても、風呂に入っても、寝ていても、あの女の事が頭から離れないでいた。


次の日、登校して教室に着くと、黒板に、“体育館に集合 BY担任”と書かれていた。


俺は体育館に移動し、背の順で並ぶ。


…一番前に。


敬之と優は身長が高いので後ろの方。
俺は小さく舌打ちして、体育座りをした。


「えー、では…本日赴任してきた先生を紹介します。 産休に入られる保健の加藤先生の代理で…増田雪乃(ますだゆきの)先生です」


体育座りにも飽きてきて、あぐらをかく。
しばらくすると、男の黄色い声が聞こえてきた。


…な、なんなんだ!?


俺は野郎共が向ける視線へと目を移した。


そこには…アレ?



「増田雪乃です。 分からないことだらけですが、頑張りますのでお願いします」


あ…アレ?
アレレのレ?


あの女はた、たしか…。


「あーーーーーーーーーーー!?」


自分でもビックリするくらい、大きな声を出してしまった。


え!?なんで!?なんでこんなとこに!!??


「2年1組の山本! うるさいぞ!」


と、教頭に怒られてしまった。
女はこちらを見てニコリと笑って、去っていった。


「やべ~、めっちゃ綺麗な人―」
「惚れるー」
「保健室通うー」
「今怪我しとこー」



と、後ろから男子の声、女子達はなんだか不機嫌そう。


女子より不機嫌な、俺がいた。
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