【短編】俺達の事情
「まあまあ、二人共」


敬之は咳ばらいして、先生に近づいた。


「大貴、その事を覚えてないから不満だったんですって。 だからもう一回やってあげてください」


「おいいいいいい!! そこナニ言ってんだぁぁ!!」


「そっか! そういう事だったのね!」


女の頭のうえに、ポンッと音を立てて電球マークが飛び出る。
何年か前のマンガのひらめきシーンじゃねーか!


「じゃあ、大貴くん。 このベッド使ってしよっか! おいで!」


「おいでじゃねーよ! てか、優がそこに寝てんだろーが!」


女に踏みつぶされて唸っている優。


「俺はそういう理由で怒ってるんじゃねーの!」


「じゃあ、何? 私、言ってくれないとわかんないよ」


「だから…その…やっぱ、初めては好きな子としたかったってゆーか…」


またモジモジする、俺。
女は目を3回ほど瞬きしたあと、目を輝かせた。


「大貴くんって純情なのね! 可愛い!!」


「か…っ、可愛いとか言うんじゃねーよ!」


からかってんのか、この女!
俺は顔を真っ赤にしていた。


その直後、チャイムが鳴った。


「じゃあ、また後で話しましょ。 授業には出てね。 この子は保健室で休んでていいけど」


女は優を指さして言った。


「いーなー、大貴。 あんな美人と」


「だからよくねっつーの!」


と敬之と言い合いしながら教室に向かった。
< 8 / 12 >

この作品をシェア

pagetop