冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
「愛理さんは姉の相手をお願いします」

和泉は魅惑的に微笑んで告げると、奈月の腰に手を添えて歩き出す。

背中に愛理の強い視線を感じながらリビングを出た。



玄関近くのホールから階段に向かう。
辺りは静まり返っているからふたりの足音がコツコツと響く。

「あの……愛理との話の邪魔をしてごめんね」

「いや、むしろ助かった。亜貴に言われたんだろ?」

「それもあるけど、私もふたりがずっと話している状況が気になっていたから」

「気になる? お前は俺が何をしていようが興味がないんじゃないのか?」

和泉は目を細めて奈月を見つめる。怒っているようには見えないけど、愛理と会話をしていたときのような笑顔もない。

(何て答えればいいんだろう。和泉はどんな返事を望んでいる?)

奈月の本音は興味があるだ。でも正直に言ったら和泉は不快に感じるかもしれない。

(それとも返事なんて求めていない?)

ちらりと和泉を見遣ると、彼は奈月に関心がなくなったように視線を逸らしたところだった。

きっとこれ以上追及してくる気はないのだろう。

ほっとする反面、これではいけないと思った。

(亜貴さんにも言われたじゃない。距離を置いていても何も解決しないって)
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