冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
奈月の返事に正直言えば、ほっとした。大きな問題は解決していないものの、彼女に悪意が無かったのだから。

「事実だ。時期的に俺の子の可能性もある」

「え、可能性って?」

なぜか奈月は不思議そうに和泉を見つめて来た。

「俺以外にも父親の可能性がある男がいるだろう。好きな男が出来たから別れたい。あのときそう言っていたんだからな」

「あ……」

奈月の顔色が変わる。

「わ、私には……」

何か言いかけたものの気分が悪くなったのか、黙り込んでしまった。

真っ青な彼女をそれ以上追及することは出来ずに、話はあやふやなまま終わってしまった。

その日以降、和泉の周囲は一気に慌ただしくなった。

奈月の妊娠を黙っている訳にもいかず、家族と和倉家に打ち明けた。

それぞれ反応は違うものの、驚愕しているのは共通している。和泉は父と亜貴への説明に追われる上に、和倉家との話し合いもこなさなくてはならない状況だった。

司波家も和倉家も妊娠を歓迎していない。和やかだった関係が不穏なものに変わって来ていた。
特に奈月の叔父の和倉豊かは異常とも思える程動揺していた。
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