冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
独り言のように『妊娠などありえない』と呟いているのを聞いた。婚約して結婚すればいずれ子供が出来る。

それなのに彼は想定外といった反応をするのだ。その不自然さに和泉の中で和倉家に対する違和感が生まれていた。

奈月本人は体調がよくないのか、部屋に籠っている時間が増えていた。ろくに会話をしないまま時間が流れていく。

奈月は話し合いを避けたがっているように見えた。和泉自身も自分の考えが纏まらず、向き合うことから逃げていた。

もし自分の子ではなかったら。悪い方向にばかり考えが行き身動きがとれないのだ。
そんなとき亜貴に詰め寄られた。

「何をもたもたしているの?」

亜貴が不満そうに吐き捨てたのは、当然奈月の妊娠の件だ。

亜貴は今回の件に強い怒りを覚えているようだった。生真面目な性格だから順序を守らないところに嫌悪感を持っている。

和泉と奈月の関係について隠されていたのも相当不満だったようだ。騙されていたと受け取ってしまっている。

決してそんなつもりはなかったが今更何を言っても信じて貰えないだろうから、言い訳はしていない。
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