冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
他に座るところが無かったのだろうが、生理的に受け入れられない。

「叔父様、話とはなんでしょうか?」

一亥も早く出て行って欲しい。そんな気持ちが現われたのか早口になった。

叔父の方も世間話をする気はないようで、前置きなく返事が返って来る。

「司波和泉との結婚をあきらめろ」

奈月はぐっと唇を噛み締めた。

昨夜も強く反対されたけれど、今日ははっきり諦めろと言い切っている。

何がなんでも奈月と和泉の結婚を妨害する気なのだ。

「それは……司波家には愛理を嫁がせるつもりだからですか?」

叔父は意外そうに片眉を上げた。

「知っていたのか?」

「知りませんでしたけど、昨夜愛理から聞きました」

「愛理か」

口が軽い娘に対する苛立ちを覚えたのか、叔父が小さな舌打ちをする。

「でも和泉さんはそんな話があるとは言っていませんでした」

「婚約は家と家で結ぶものだ。私は司波家の当主と話をしている」

叔父は馬鹿にしたような目を奈月に向ける。

(司波家の当主って、和泉のお父様よね)

広川堂を訪れたところを何度か見かけたことがある。厳格な雰囲気で少し怖い印象だった。親子だけれど和泉とは顔も雰囲気も似ていない。
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