冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
祖父母の影響で興味を持ち始めた仕事だけれど、とても大切な場所だった。

和泉と別れてもなんとかやって来たのは好きな仕事があり、仲間がいたから。それらを失って一人で生きていけるのだろうか。これから先の不安に心が重く沈むばかりだった。



あっと言う間に週末になり、和泉と愛理の見合いの日を迎えた。

叔父家族は支度があるとかで朝早くから出かけたけれど、奈月は通常通り広川堂に出勤した。

今頃和泉と愛理が和やかに会話をしているのかもしれないと想像すると居ても立っても居られない気持ちになる。

(今すぐ逃げ出したい)

今日家に帰るのが怖い。聞きたくもない和泉の情報を知らされ傷つくのが目に見えているのだから。

でも家を出る準備は少しも進んでいない。仕事を辞めるとも言い出せていなくて、広川社長に工房視察の日程を伝えられたときは「分りました」と頷いてしまった。

どう動くのが最善なのか判断できない。

自分にとってあまりにままならないことが短い間に次々と起きたせいか、思考能力が低下しているようだ。

何もかもが八方塞がりで、残された選択肢は少ない。

(しかも、どんどん悪いほうに向かってるみたい)

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