サンタクロースに恋をした
 中学3年の冬、クリスマス前、その当時付き合っていた彼女から突如フラれた。

 「他にクリスマスを過ごしたい人がいるから」と。
 
 まあ、それなら仕方がない、僕はそれしか思わなかった。

 今までも全てそうだった。去る者の手を握ったことは一度もない。別に、引き留める理由もないからだ。

 クリスマスの日、苺のショートケーキを買いに街中に出ると、お洒落をしている今にも泣きそうな女子の姿が目に入ってくる。

 その人はスマホを見るなり誰かに電話をかけ、かと思うと一瞬のうちに顔から生気が無くなった。

 微かに聞こえてくる会話の内容からすると、どうやら彼氏にふられたようだ。

 僕と同じだな……とその人を見ていると、その人の目から涙が一筋流れる。

 いや違う。……僕とは違う。僕はフラれたからって泣いたりしない。

 でも、その人は泣いている。その人をそのままにしておけないと、僕の中のもう1人の僕が言っている。

 近くの店に入り、ハンカチを買った。

 しかし、なんて言って渡そう。とういうか、いきなり渡して不審者に思われないか?


 でも、買ってしまったし……。
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