ライオン王子に飼われたネコさん。
魔女さんに愚痴
あれから一ヶ月。
会社により近いマンションに引っ越し、仕事に精を出しつつ恋愛方面にも自主的に行動した。
赤江が誘ってくれる合コン全てに参加したり、婚活アプリに登録したりしていいなと思う人と食事に行ったり。
異性と話すのは苦手じゃないし、家事も不得意じゃない。見た目もそんなに悪くない、はず。
「なんっで一人も彼氏までいかないんだろ!彼氏ってどう作んの!?」
一度食事に行くまではうまく行くのに、それ以降がどうもうまくいかない。惨敗中の状況を打開すべく、合コン終わりに赤江を捕まえて二人で飲んでいた。
「七瀬さーん。彼氏いたことない私に言うのは間違ってますよ★」
手を銃の形にして指差された。
それも、パチンとウインクつきで。
(うざいポーズだなぁ。)
ヒヤリとした視線を向けていると「あ、それじゃないですか?」と言われた。
「それって?」
「七瀬さん美人だから、笑顔なくなった瞬間がちょっと怖いんですよ。ほれほれ」
手鏡を渡される。
鏡に映っているのは暗めの茶色に染まった髪を巻き髪にし、化粧をしたいつもの自分。グニグニと口角を上げるように手で押し上げてみる。
面白くもないし、赤江に対して社交辞令の笑みを見せる必要もないので笑顔ではないが、無表情というわけでもない。
「これ、怖いの?」
「七瀬さんは目力がありますからね。笑ってたらめっちゃ可愛いんですけど、笑顔がないと冷徹美人って感じがしてちょっと怖いです」
「えーショックー」
二重でぱっちりしている目は目尻が少々吊り上がっていていわゆる猫目。目力が強いとは昔からよく言われていた。
「でも美人さんだからこれからいくらでも出会いがありますよ!私が保証します!」
「何の保証よ……。まぁ、ありがとね」
自分のことを不細工とは思わないが、美人だとも思っていない。もしも周りからそう思われているとすれば怜音に釣り合うために必死で磨いてきた結果だった。
綺麗になる努力を惜しまなかった点に関しては自分を褒めたいと思った。