ライオン王子に飼われたネコさん。
「どうして七瀬さんじゃダメなのかデート相手に聞いてみます?合コンの時のメンツなら私が聞きますよ?」
そんな勇気はないと言いたいところだが、四の五の言っている場合でもなかった。
何せ怜音としか付き合ったことがない真白は確実に怜音色に染まってしまっていて、それ以外の色への染まり方が分からない。
「頼むわ」
「はーい!」
赤江はすぐさまスマホを取り出し、画面をタップする。彼女のコミュニケーション能力を時々羨ましく思う。
誰とも壁がなく、分け隔てない。空気が読めないようで、実はかなり空気が読める女であり、人が何をして欲しいかと言うのを機敏に感じとる。
本能のままに生きている彼女には動物的勘でも働くのか、必要なものがどこにあるのかをすぐに見つけ出すのに危険だと思えるラインはするりと躱す。
「にしても、意外ですね。七瀬さんってめちゃくちゃ色んな人と付き合って百戦錬磨の女感あるのに」
しかし時々失礼極まりない。
「言っとくけど、私前の彼氏しか付き合ったことないから赤江と似たようなもんよ」
「それは一緒にしないでください!私"前の"とか言える人さえいないんで!!やだ!言ってて虚しい!!あ、連絡来ました」
真白からの連絡には遅かったのになんて速さだと思っていると。
「なんか、デート中ボーッとして上の空だったり話聞いてないとか、返事がなくて興味なさそうに見えたって言ってます。あと、無表情の時が怖かったって」
思っていたよりも相手に不満を持たせていたことにショックを受け、思わず顔を覆う。何よりもショックだったのは赤江に言われたことがそのまま的中していたことだ。
「なに、そんな怖いの!?」
「それはおまけみたいなものですよ〜。もっと重大なのは七瀬さんがデートに集中してなかったってことです!ちなみに、この店に来るまでにもボーッとしてましたよ!」