ライオン王子に飼われたネコさん。

ライオン王子にお別れ



会社内のコンビニで今日のお昼を買う。

普段からさっさと食べられるおにぎりばかりを買っているので、一直線におにぎりコーナーへ向かえば良いのについつい見てしまうのが雑誌を置いているラック。

そこには今週発売の漫画雑誌や女性誌、ゴシップ誌が置かれている。一つ目に留まった雑誌があった。

手を伸ばすのは今週の展開が気になる漫画雑誌でも可愛い付録が付いた女性誌でもない。

『今度は美人モデル!?ライオン王子、またもお持ち帰り!!』と大きく書かれたゴシップ誌。

それをカゴに入れた後、緑茶とおかかと鮭のおにぎりを一つずつカゴの中に入れて休憩ラウンジへと向かった。

「あ〜、ショック〜」

後輩の赤江がスマホ片手に深いため息を吐いた。
他の女性社員も同様だった。

「何、どうしたの」

「ライオン王子、また熱愛ですよ〜」

「あぁ」

"また"ね、とピリピリとおにぎりの包装フィルムを剥がす。

「七瀬さんは興味ないんですか!?国宝級イケメンの熱愛ですよ!?」

「雑誌を買うくらいには気になってるよ」

ビニール袋の体積のほとんどを占めるゴシップ誌を机の上に若干叩きつけるような気持ちで置いたが、誰にもそれを咎められなかった。

赤江を含め、気になっているのはその中身で意識はそっちに向いているからだ。

「七瀬さんってこういうゴシップ誌を読むんですね!?意外〜。今から読むんですか?」

キラキラと期待に満ちた目が周りから送られてくる。

スマホで無料で読める記事には内容に限りがあり、詳細な内容を知るにはゴシップ誌の売り文句に踊らされて買わざるを得ない。

こういう雑誌の殆どが信憑性は低く、嘘か誠か判断しかねるし、芸能人のプライベートなどお構いなしな写真掲載や記事内容はどれも低俗でくだらないものばかり。

わざわざ買ってまで知りたいとは思わないので、本当に内容が気になって仕方ないという場合しか買わない。

それは恐らく大体の人が同じ気持ちだろう。

現に彼女たちもネットニュースで得られるだけの情報ではモヤモヤするが雑誌を買ったりはしない。

本当は何故ゴシップ誌を買ってきたのか気になるところだろうが、それよりも気になるものがテーブルの真ん中に置かれている。

今、誰もがその中身が気になっている。

お弁当の包みを折ったり、飲み物をカバンにしまったりして少しでもスペースを作ろうとしている彼女たちにやれやれと思いながら「みんなでね」とページをめくった。
< 2 / 137 >

この作品をシェア

pagetop