ライオン王子に飼われたネコさん。


仕事上は確かに何の問題もなかった。

寧ろ、普段はバーの女店主で魔女の彼女が普通にOLとして仕事をこなせていることに驚いてしまうくらいだ。

紅羽扮する真白は真白本人と相違なく仕事をこなし、人間関係も何の問題もなかった。

そこまでは真白と仲のいい後輩の赤江にだけ「なんかいつもと違う感じがしますね?香水とか変えました?」と言われるくらいで、それ以上は疑われることはなかった。

しかし、真白になって三日目の水曜日。
出張から帰ってきた灰葉と顔を合わせた時のことだ。


「お前、誰?」

見た目は何も変わらない。
中身だってそのままコピーしている。

それなのに、たった一瞬で見破られた。

ただの偶然や冗談だと思いたいところだったが、それにしてはあまりにも正確すぎる。

「後輩の名前を忘れたんですか?」と誤魔化したが、それ以降、やたらと視線を感じるようになり終始ドギマギした日々を送ったという。

(じゃあ尚更早く戻ったほうが良いじゃないですか!)

「だめだめ!今戻ったりしたら……。とにかく、もう少し私の方で頑張るから!真白ちゃんは未練を断ち切るためにも最後に思う存分怜音との日々を楽しんで!じゃあね〜!」

言い逃げとは正にこのことを言うのだろう。

(逃げられた!)


またしても真白は元に戻る機会を逃してしまった。
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