ライオン王子に飼われたネコさん。
だから衣類と貴重品をよこせ。そう言われることが分かっていた紅羽が先に口を開いた。
「だ〜め!最低の一週間は過ぎたけど、まだ時間は十分あるもの。……それに、ちょ〜っとだけ厄介なことになってて、真白ちゃんとしても今元の姿に戻るのは困っちゃうかも……なんて」
さっきまで意気揚々と喋っていた紅羽にしては歯切れ悪く答えるのでマシロは精一杯眉間にシワを寄せた。
(何かやらかしたんですか?)
いくら記憶をコピーしたといっても中身は紅羽。
普段はバーの女店主として働いている彼女。
それも魔女の彼女がOL仕事をできるのか不安だったが、まさかそれが的中してしまったのか。
それなりにキャリアがある分、自分の預かり知らぬところで崩されるのは困るし、結婚できるまでは自分のことは自分で養わなくてはならないのだから職を無くすようなことになるのだけは勘弁だ。
「安心して。仕事に関しては何の問題はないのよ。問題なのは真白ちゃんの先輩で課長の灰葉嵐はいば あらしさん」
(灰葉先輩ですか?)
灰葉先輩とは真白の二つ上の先輩で、すでに部長候補にまで入っているくらい仕事ができる男。
会社の服装規定はかなり緩いとはいえ、短髪でツンツンした髪は灰色、更に耳にはピアス穴がいくつもある灰葉は見た目で言うならかなりヤンチャ系なのだが悔しいことに仕事ができ、営業で外に行く時にはきちんとした格好で出向くので誰も普段の彼に対して文句は言えない。
怒るとかなり怖いが面倒見は良く、後輩想いな一面もあるよくできた上司だと真白は思っている。
仕事でミスをして灰葉に怒られることはあるが、仕事に関して問題がないのならそこでなぜ灰葉の話が挙がるのか。
「それがね……」
紅羽は眉尻を下げてこの一週間のことを報告するのだった。