王子なドクターに恋をしたら
「手がお留守よ!何してんの」
お母さんに声を掛けられ、はっと我に返った。
思い出に浸っていたら、作業の手を止めていたらしい。
何でもないと、苦笑いしながらせかせかと手を動かす。
この半年はあたしにとってかけがえのないものになっている。
楽しい思い出や新しい出会いを思い出すと止まらない。
またついつい楽しい思い出を思い出していた。
10月はこの地域では紅葉真っ盛り。
いい時期に和泉くんがこちらに来たから和泉くんの休みの日に紅葉を見にドライブに出かけた。
ちょっと車を走らせれば赤や黄色や緑のコントラストが綺麗な景色が直ぐに出迎えてくれる。
時々車から降りては写真に収め、道の駅などに立ち寄ってお土産を買ったり小腹を満たしたりして楽しんだ。
それにその日10月18日は和泉くんの誕生日。
ほんとにちょうどいい日に来てくれた!
直接おめでとう!とお祝い出来る事が出来て嬉しくて、あたしがプレゼントを渡すと和泉くんが引いてしまうくらい泣きながら喜んでしまった。
「そんな泣かなくても…」とちょっと困った顔であたしの頭を撫でてくれる和泉くん。
タイミングが悪かったら離れ離れだったかもしれないんだから喜んだっていいじゃないか。
涙の残る目で頭一つ分上にある和泉くんをつい睨んでしまった。
目が合い苦笑いを溢した和泉くんはあたしを抱き寄せ「ありがとう。直接お祝いしてもらえて嬉しいよ」と耳元で囁いた。