王子なドクターに恋をしたら
和泉くんの囁きは甘くて色っぽくてそれだけであたしを骨抜きにしてしまうのだ。
あの日の囁きが今でも思い出されて勝手に顔が熱くなる。
恐るべし和泉マジック!

パタパタと火照った顔を仰いでるとまた違う思い出が蘇る。

恋人たちにとって最大のイベントとも言えるべきクリスマスは残念ながら逢えなかった。
代わりに大きなクマのぬいぐるみと雪の結晶のピアスが送られてきてビックリ。
あたしは逢った時に渡そうと皮の手袋を用意してたんだけど、送ればよかったねと、お礼の電話をしたとき年末はこちらに来れるからその時でいいよと和泉くんが言った。
年末年始はこちらで過ごせると聞いてあたしは喜んだ。


明日、和泉くんが来るという大晦日前日。
お店の閉店作業をしていて上着も着ないで外に出ると意外と寒くて体を震わせた。
雪も深々と降っていて冬の本番はこれからだけど今日は凄く冷えるなあ、と空を見上げた時だった。

「…ゅきっ!逃げろっ!」

「ひゃっ!?…」

後ろから叫び声が聞こえたと思ったら誰かに抱き着かれた!
へっ…変質者!?

あたしは一瞬にして青ざめ逃げろと言われても硬直して動けなかった。
ダウンのもこもこした腕が見えてそれは一層力を強め、顔の横にフードのファーとマスクが見えた。
耳元で囁く声が聞こえる。


その声にふっと力を抜いた時、ばっとダウンの腕が誰かに引っ張られた。

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