王子なドクターに恋をしたら


「どう見ても変質者だったぞ!!!」

家に入って落ち着いてからもお兄ちゃんは憤慨してた。
遠慮気味だったけど。

お兄ちゃんがそう言うのも無理はない。

和泉くんは黒いロング丈のもこもこのダウンジャケットをきっちり上まで締めてファー付きのフードを被りマスクをし、全身真っ黒でほぼ顔が見えない状態でのそのそ歩いていたという。

ここら辺じゃ寒さに慣れてる人ばかりなのでそこまで完全防備な人はいないから明らかに不審者感が出ていた。お兄ちゃんは和泉くんの後ろを歩いていてずっと同じ方向に行くものだから気になっていたという。

そりゃそうだろう。行先は二人ともここなんだから。

そして店から出てきたあたしを見つけた和泉くんは足を早め明らかにあたしを狙ってると気付いてお兄ちゃんは逃げろと叫んだ。
和泉くんはフードを被っていたから後ろの叫び声がちゃんと聞こえなかった上に自分のこととは思わずあたしに抱き付き囁いた。

そして、なんやかんやで現在に至る…。

……

「ごめんね、こんな寒いの初経験だったものだから…」

ばつが悪そうに和泉くんは首の後ろを掻いていた。
東京の気候のままの恰好でこちらに着いたらあまりの寒さに慌てて分厚いダウンコートを買ったんだって。
気候の違いに戸惑ったであろう和泉くんがおかしくてクスクス笑ってるとお兄ちゃんが今度はあたしに文句を言ってきた。

「お前も!襲われそうになったらすぐに逃げろ!鈍感すぎるぞ!って、その前に彼氏がいるならそう言っとけ!」

「あのねえ…」

呆れて言い返すのもめんどくさい。
ジロリと睨んでふんと鼻を鳴らした。

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