王子なドクターに恋をしたら
見上げれば和泉くんは優しい微笑みを湛えて、僕はそのつもりなんだけどな、と呟いた。

え?どういうつもり?と思ってるうちに繋いだままだった小指が彼の唇に吸い寄せられるように上がっていく。

「あっ…!」

キッ…!キスした!
チュっと二人の小指にキスを落とされ変な声が出てしまった。
思わず反対の手でマフラーごと口元を押えた。
ニッと悪戯が成功したみたいに笑う和泉くんから目が離せない。

「僕にとったらどっちも美味しい話なんだけど。いいよ、約束」

そう言って小指が離れていく。
小指から伝わる僅かな温もりが消えていきそうで慌ててもう片方で小指を包んだ。

「でもその前に、明日も逢えないかな?」

「えっ!?」

「明日は暖かいお店で食事しよう。仕事何時に終わるかな?」

「え…え…ええ〜!」

あたしと逢ってくれるの?
しかも明日!?
嬉しくて舞い上がってどうしようもなく胸が高鳴る。

< 16 / 317 >

この作品をシェア

pagetop