王子なドクターに恋をしたら
違う、あれは家族じゃない。お兄さんの奥さんと甥っ子だ。
咄嗟に自分に言い聞かせていた。
でも女性の方はすごく可愛らしい人で、二人並ぶととってもお似合いで、和泉くんが優しい表情でさり気なく女性の腰に手をやりエスコートしてるのを見てあたしの心臓はドクドクと嫌な跳ね方をして苦しくなった。

「あ…あたしちょっと用事を思い出したんで行ってきます!」

「え?千雪さん!?」

居ても立ってもいられなくてくるりと翻し聡子さんの声も振り切り足早にその場を去った。

和泉くんってば、和泉くんってば!お兄さんの奥さんにあんな優しい顔してまるであの人の事が好きなんじゃないかって勘違いしちゃうじゃない!
和泉くんがそんなこと思うわけないって頭では分かっていても和泉くんの傍に居るあの人が羨ましくて、見てしまった光景が脳裏にチラついて、しなくてもいいヤキモチがむくむくと湧いてしまってどうしようもない。

でも、ズンズンと来た道を戻りながらそんなことを思ってると足はいつの間にか止まっていた。

馬鹿だあたし…。
あんな光景見たからってなんで怒ってるの?
用事なんて和泉くんに逢う以外ないのにどこに行くって言うんだろう。
和泉くんに逢いたくてここまで来たって言うのにあたしは逢う勇気も無くて自分の情けなさに項垂れた。

和泉くんはあたしのこと気付いてしまっただろうか?
< 161 / 317 >

この作品をシェア

pagetop