王子なドクターに恋をしたら
「和泉…くん…」

「ありがとう逢いに来てくれて。すごく嬉しい…」

「ほ…ほんとに…?」

あたしは信じられなくて顔を上げると和泉くんはブルーの瞳を細めてあたしの涙を拭った。
懐かしいその表情に感極まって涙は後を立たずにぼろぼろ溢れてく。

「嬉しいに決まってるよ。ごめんね僕から逢いに行けなくて」

「ふ…うっ……」

その言葉に横に首を振るだけでもう何も言えなくてあたしは和泉くんにしがみついて声を押し殺して泣いた。
その間ずっと頭を撫で抱きしめてくれた和泉くんの温もりにあたしの不安は溶けるように消えていく。



人の往来が激しい道のど真ん中で抱き合ってたと気付いたのはそれから暫く経って涙がやっと止まった頃。
通り過ぎてく人の視線にあたしはものすごく恥ずかしくなって茹でだこのように顔を真っ赤にさせて俯いた。
そこにポンポンと頭が撫でられ「帰ろう、聡子さん達が待ってる」と和泉くんに言われて手を引かれた。

「ごめんねこんなところで泣いたりして…」

「泣かせたのは僕だから気にしないで」

手を引かれ一歩前を行く和泉くんが振り返って優しく微笑んだ。
繋がれた手をキュッと握ると強く握られて和泉くんに逢えたんだ…と今更実感した。


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