王子なドクターに恋をしたら
不安が消せないまま俯くと手が絡められキュッと握られた。
再び和泉くんを見れば愛おしげな眼差しをあたしにくれる。
言葉はなかったけどここにいていいって言われてるみたいでふっと肩の力が抜けた。

その時、タッタッタッと軽快な足音が聞こえこちらに向かってるのに気付いて後ろを振り返った。

「あ、兄さん」

「え?」

一緒に振り返った和泉くんの呟きにあたしは目を見張った。

「和泉、叶は?」

走ってきた高級そうな細身のスーツを着こなした男性はあたし達の前で止まった。
走ってきたからか少し乱れた黒髪はつややかで、深いブルーの瞳、端正な顔は和泉くんのお父さんに似ていて、かっこいいというより綺麗と言った方がしっくりくるような神々しさを放っていた。
つい見惚れてしまってるとお父さんと同じように鋭い視線があたしに向いてびくっと固まった。

「叶ちゃんはさっき分娩室に…」

和泉くんが言いかけたとき分娩室から看護師さんが出てきた。

「立ち会いを希望されてる旦那様は…?」

「私です」

「そろそろ生まれます準備をお願いします」

お兄さんは看護師さんに返事をしてお父さんと聡子さんとひと言言葉を交わし來翔くんの頭をぽんとひと撫でしてすぐに分娩室に入っていった。

いよいよだと思うとさっきの鋭い視線も忘れて関係ないのに緊張してきた。
ドキドキして繋いだままの手に力が入る。
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