王子なドクターに恋をしたら
「あたしね、変な夢を見たんだ」

「え?どんな?」

ケーキを食べながら、あたしは今日見た不思議な夢を語った。

舞台はこの家。
慣れ親しんだソファーには和泉くんが座っていて難しい医学書を読んでいる。
その姿は5、6十代の少し先の姿だった。
歳を取っても和泉くんは壮年の渋さが加わって素敵な男性だった。
見惚れていると和泉くんの隣に若い女性が座った。
栗色の髪、ブラウンの瞳、少しあたしに似てるようであたしじゃない。

その女性は和泉くんに寄り添い幸せそうな顔をして何か話してたみたいだけどそこまでは覚えてなかった。
和泉くんは医学書を閉じ優しくその女性の肩を抱いた。
和泉くんの愛おしそうな瞳。
仲睦まじい二人を見てあたしは涙を流した。

夢は、そこでおしまい。
目が覚めるとあたしはほんとに涙を流していた。

「え、それって…」

明日美があたしの話を聞いて顔色を変えた。
でもあたしの心は穏やかだった。

「でもね、あたし悲しいとか思わなかったんだよ。逆にあったかい気持ちで良かったって思ったの。これってどういう意味かな?もしかして将来あたし達は別れて和泉くんは本当に好きな人と結ばれてそれをあたしが良かったと喜んでるのかな?」

「やめなよ、そんな夢は忘れていいよ!きっと今離れ離れで千雪の不安が現れただけだって!高槻先生と千雪は絶対別れたりしないよ!」

明日美が必死に否定してくれるからあたしは笑ってしまった。
でも本当に、あったかかったんだよ。

和泉くんの事、ずっと待ってるつもりだったけど…。
もし、万が一、和泉くんと別れることになっても、和泉くんが幸せならそれでいいかなって思ったんだ。

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