王子なドクターに恋をしたら
「なんで、私じゃだめだったのかな?」

「紘子さん…」

また、この話だ。
僕にはもう紘子さんを想う気持ちはない。
何度話しても紘子さんは納得してくれない。
ずっと平行線だった。

「和泉くんに彼女がいるって聞いても信じられなかった。またきっと気まぐれに遊んでるだけだって。ねえ、本気じゃないんでしょう?」

「…紘子さんはさ、なんで僕が浮気しても許してくれたの?」

「え?」

「一応さ、僕たち付き合ってたじゃない?でも僕は遊びをやめられなかった。紘子さんはそんな僕をしょうがないなといつも笑って許してくれた。自分の悪事を肯定するわけじゃないけどそれってホントに紘子さんは僕の事を好きだったのかな?」

もちろん全部僕が悪いんだけど、と、自分勝手なことを改まって聞いてみたら紘子さんは動揺した顔を見せる。

「そ、そんなの…ほんとは嫌だったわよ!でも私はあなたより年上だからお姉さんぶって余裕なフリをした。嫉妬に狂って束縛なんてしたらあなたは私から離れていくと思ったの。……もし、私がいやだって言ったら和泉くんはやめてくれた?」

「そうだね…わからない」

悲痛な表情をする紘子さんに僕は無情にも首を横に振った。
当時の僕は自由でいたかった。
紘子さんという帰れる場所があったからこそその優しさに僕は甘え切っていたんだ。
彼女の想いなど気付きもしない僕はやっぱりわがままで酷い男だった。

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