王子なドクターに恋をしたら
千雪と付き合って一番変わったのは他の女性に何の興味も持たなくなった事かもしれない。
そして嫉妬する自分。
千雪に男が寄るだけで許せなかったし浮気なんてする気も起きなかった。
こんな自分が不思議だった。

「ただ、僕が今同じことをしようとしたら千雪は泣いて怒るだろうなと思って。そう思うとしたいとも思わないんだ。千雪を悲しませたくない。これが僕の答えだよ」

「本気…なの?」

「本気、だよ。空っぽだった僕の心はようやく本物を手に入れたんだ。千雪が運命の相手だって自信を持って言えるよ」

ついさきっきまで悩んでいたというのに、僕は晴れ晴れとした気持ちで言い切った。
唇を噛んでいた紘子さんが自嘲気味に笑って呟く。

「ふっ…何よ偉そうに、自分だけ幸せそうな顔しちゃって、ほんとに酷い男ね」

「紘子さん、あなたは凛とした大人の女性で素敵な人だ。僕は今でも紘子さんを医者としても人としても尊敬してる。こんなことで立ち止まって欲しくないんだ。僕の事は忘れて前を向いて欲しい」

…紘子さんにとって運命の相手は僕じゃないんだ…。
残酷なことを僕は平気で言う男なんだ。こんな男は早く忘れた方がいい。

「…諦めないといけないのね…?」

哀愁を湛えた震える声に何の感情も沸かない。
残してきた千雪が気になってもう話を切り上げたかった。

「そうしてくれると助かります。もう、この話は終わりにしよう。紘子さんが辛くなるばかりだよ」

そう言って僕は背中を向けた。
これ以上話しても僕の気持ちは変わらない。紘子さんを傷つけるだけだ。


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