王子なドクターに恋をしたら
千雪…千雪…
愛しい人の声が聞こえる。
ふと、目を開けると目の前に和泉くんがいる気がして手を伸ばした。
でも、それは空を掴み幻だと気づく。
ここが何処だか忘れてあたしは思った。
ああ、和泉くん、逢いたかったなあ…。
「…千雪!」
「…え…」
横から声がして空を掴んだはずの手が温かい手に握られた。
「…い、和泉くん?」
「なんでこんな…なぜ熱があるのになんでいつまでもこんなところにいるんだ!僕が来れなかったらどうするつもりだよ!」
いつも優しい和泉くんが怒鳴るものだからあたしは目をぱちくりさせて固まった。
その間に首筋に手が入りその冷たさに肩を竦める。
険しい表情の和泉くんはあたしの頬をひと撫でしてから抱き上げた。
急な浮遊感に目が回り思わず和泉くんにしがみ付く。
「なっ…あ…」
「大人しく掴まって。家に帰ろう」
声色の怖い和泉くんにあたしは何も言えず、車で来たらしく後ろに乗せられると和泉くんは黙ったまま車を発進させた。
逢えて嬉しいのに、怒ってる和泉くんに話しかける事も出来なくて、あたしはなんて謝ろうか考えてるうちに頭の中はぼやけていった。