罪か、それとも愛か
愛紗に引きずられやって来たのは、古びたビルの2階。

おそらく夜に酒を提供している店だろう。古いシャンデリアは、飾りのガラスがくすみ、ところどころ破損している。飾られた造花は、色が褪せている。ビロード張のソファは、至る所にほつれがあって、座面はテカテカに擦れてしまっていた。夜ならばまだしも、昼間はそのさびれ具合が目立つ店だ。

黒服を着た若い男の店員が一人、カウンターでアイスピックを使い、大きな氷の塊を砕いている。

「いらっしゃいませ」

だるそうな声と共に店の奥から中年の男性が現れた。

「あぁ、羅舞(らぶ)か。コーヒーでいいか?」
「えぇ、お願いします」

中年の男性は万事承知しているとばかりに、カウンターの若い男に目配せをしている。若い男は氷を砕くのをやめて、ガチャガチャとコーヒーの準備を始めた。


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