罪か、それとも愛か
だが、冬輝はわずかな琴羽の様子の変化を見抜いた。琴羽が『幼い』という言葉に反応したのだと即座に気づく。
パパ、ママと呼ぶときだけは、誰より強く生きようとする琴羽が唯一『子供』でいられる瞬間。
たとえ相手が誰であろうと、そんな琴羽を否定することは許さない。


「琴羽は生まれたときから一条を背負って生きている。それはそこらの大人よりずっと重い責任感だ。
そんな琴羽が唯一使える特権を『幼い』なんて言葉で片付けるな、宮崎」

今夜、初めて冬輝が愛紗に対して反応した。
一瞬で場が凍りつく。

冬輝がフォローしてくれたことで琴羽の溜飲が下がる。やっぱり冬輝はいつでも琴羽の最大の理解者だ。

愛紗は顔を強張らせたまま。何か言おうと言葉を必死に探す。だが、とっさに何も浮かばないようだ。

そんな様子を見ていた夏姫は小さく笑った。


「……バカだなぁ。お兄ちゃんの前で琴羽の悪口になるようなこと言うなんて」
「え、何?夏姫ちゃん?」

思わずもれた心の声。顔は微笑んだまま愛紗の目が鋭く夏姫をにらんでいる。

「なんでもない。ごちそーさまでした。私、コーヒー淹れるね」

夏姫は兄に媚びてばかりの愛紗のことが嫌いだった。
しかも愛紗は琴羽を敵視している。それも気に入らない。

だが、当の琴羽は愛紗を相手にもしていない。
ライバル視されたところで、琴羽には痛くも痒くもないだろう。琴羽と自分たち兄妹は生まれたときからの強い絆で結ばれている。ちょっとやそっとで揺らぐものではない。

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