罪か、それとも愛か
普段なら人を傷つけることなどない穏やかな性格の冬輝が、はっきりと敵意をむき出しにして怒りをあらわにしている。

こんな姿を見るのは琴羽でさえ初めてだった。

それは愛紗が見せる狂気にも似た激情とは異なり、静かだがすべてを燃やし尽くしそうなほど高温の青い炎をまとっているよう。

「琴羽ちゃんのためならそんな顔出来るんだ。水上くんが怒ったところをみるのは初めてよ。
琴羽ちゃんが関係ないなんて、本気で言ってるの?
水上くん。結局あなたは琴羽ちゃんを一番愛しているのよ」

愛紗の放った言葉が、冬輝の胸にストンと落ちた。

愛。それは言葉にすればたった二文字の簡単な感情だ。だが、実際にはそんな簡単なものではない。

琴羽にとって愛とは永遠に失ってしまったもの。
応えられなかった母の愛は罪へと形を変え、琴羽を苛むもの。

だから冬輝は自分の感情を曖昧なまま認識しないようにしてきた。
それなのに。
はっきりと言葉にすれば、これほどスッキリと収まる言葉だった。

ーー俺は、琴羽を愛している。

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