罪か、それとも愛か
「琴羽、それ!まさか宮崎にやられたのか!?」
「え、あぁ、違う違う。マリアさん容赦ないから。消える暇なくて」
「マリアさんって、黒川さんの奥さんか。それならこれは、琴羽が頑張っている証拠なんだな」

冬輝はそっと手を伸ばし、青黒く変色した皮膚に触れた。

「強くなれるのが楽しいの」
「琴羽は運動神経いいもんな。触っても痛くないか?」
「そりゃあ、押せば痛いけど。もう慣れたわ。体中打ち身だらけだし……見る?」

シャツの裾を持って、琴羽は冗談めかして言った。

だが。

「見る。見せて」

予想外の冬輝の返事に、琴羽は慌てる。

「やだ、冗談だよ。汚いし」
「汚くなんてないよ。琴羽が頑張った証拠じゃないか」

冬輝は笑いながらそっと琴羽の体に腕を回した。

体を密着させれば、冬輝の体からはほのかに消毒液のにおいがした。
父や母とおなじその匂いは琴羽を安心させ、どうしようもなく心の鎧を剥いでしまう。

「冬輝、パパとママと同じにおいがする。病院のにおい。小さい時、お迎えに来てくれたママもこうやって抱きしめてくれた。
なんか、懐かしくてホッとする。
ダメなのに甘えたくなっちゃう」

「それでいいじゃないか。もう余計なこと考えるな。
ここには俺しかいない。今は『一条琴羽』の鎧を脱いで、ただ、俺だけを見て甘えてろ。
どうしてほしい?琴羽」

こんなところが冬輝らしい。答えなんて決まっているのに、琴羽に選択させてくれる。
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