罪か、それとも愛か
五嶋社長のほうがハラハラとしている。拓人ににらまれることの恐怖をよくわかっているのだ。

だが、拓人は千鶴のことを歯牙にもかけない。

「この子は医学の道より、こちらの世界の方が向いているようで。すでに、経営の一部を任せています。
改めて紹介します。光英学園フリースクール代表の一条琴羽です」

拓人が琴羽を一人のビジネスマンとして扱ってくれた。それが、何より嬉しかった。

「なんと!お若いのに素晴らしい!
うちの息子とは大違いですな」
「おや、五嶋社長の息子さん、ですか」

公には五嶋に実子はいないはずだった。

「まぁ、実は恥ずかしながら不肖の息子でして。
今日も連れてきたものの……。
あ、あそこにいるな、千鶴、連れてきなさい」

少し先のテーブルで料理をつまんでいた青年。千鶴が声をかけに行く。

「アイツは、まぁ……私の若気の至りというやつで…。私もこの歳です。やはり、血のつながった息子を放っておくことができず。
これから、よろしくお願いします、一条社長」

千鶴に聞こえないように小さな声で、五嶋社長は隠し子の存在を明確にした。

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