罪か、それとも愛か
「なぁ、一条さんよ。この会場にいる奴らの命と引き換えに金くれよ。一生遊んで暮らせる金。あと、そこのねーちゃんもくれ。色っぽくて美人でいい女だ」

犯人が琴羽を舐め回すように見る。
そのねっとりと絡みつくような視線に不快感が湧き上がるが、ぐっと飲み込む。

冷静さを失えば、負ける。

大丈夫。マリアがいる。
マリアなら、たとえ琴羽にもしものことがあっても拓人と花音を守ってくれる。
そうそうたるSPたちもいる。彼らも一瞬のチャンスを逃しはしないだろう。
それに、会場の外に沢山の気配を感じる。恐らくは警察が突入の準備をしているのだろう。

とにかく突破口を開けばいい。

だが、やっかいな人質がいる。
琴羽を侮辱した千鶴を助けたくもないが、犠牲になれば世論は五嶋に同情する。こちらは助けられなかったことで批判される。それは避けたい。

犯人は右手にナイフ、左腕で千鶴を抱き抱えつつ手に起爆装置のようなものを持っている。
運悪く千鶴のふくよかな体が琴羽と犯人の間を遮っていた。
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