罪か、それとも愛か
震える手で水を受け取った五嶋と、背の低い花音の目線の高さが一緒になった。

「君は大丈夫?」

五嶋は花音を気遣って話しかけた。が、花音はその優しさを一蹴する。

「当然。こんなことでいちいち倒れてたら一条の娘は務まらないわ。
ねぇそれより、琴羽と付き合っているの?」

パーティ会場ではおとぎ話の姫のように愛らしかった。だが今、五嶋の前にいる花音はひどく大人びた高飛車な佇まいで、とても同一人物とは思えない。

「ち、違う。ただの友達だよ」
「そうよね。琴羽とは釣り合わないもの」

花音はバッサリと言うと、スマホを取り出していじり始めた。もう五嶋には興味ないらしい。

「ハッキリ言うなぁ。お姫様みたいに可愛い顔で」

「五嶋くん、花音は子供の姿をした大人よ。油断すれば自尊心がボロボロにされるから気をつけて」

「いろいろヤバすぎ。よく平気だな、琴羽」

「私の婚約者候補に名乗りをあげるならこれくらいのことで動揺してはダメ」

五嶋は極限状態の緊張感で失神寸前だったというのに、琴羽はけろりとしているように見えた。

「すげぇな。尊敬する。……惚れそう」
「五嶋くんには萌音がいるでしょ?」

小さく笑って琴羽は視線をホテルに向けた。

衆人環視の状況で琴羽の緊張の糸は解けない。一条の令嬢という矜持が、安堵を許さない。

極度の緊張感で手足は感覚がないほどに冷え切っている。だが、拓人や花音の前で弱さを見せたくない。
心配かけたくないしなにより失望されたくなかった。

その時。
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