罪か、それとも愛か
『…今回のテロ事件を受け、市内の企業も郊外で工場を営む企業も、臨時休業を余儀なくされています。テロ当日の夜から出ていた外出禁止令はいまだに解除されていません。非常に緊迫した状態が続いていますね。
この状態が続くようなら、周辺に拠点を置く日系企業は引き揚げも検討しなければならないでしょう。
…次のニュースです』
手元のパソコンで新聞の電子版にも目を落とす。
数日前から連日流れている東南アジアでのテロ事件に関する報道だが、テレビからも新聞からも良くも悪くも真新しい情報は見当たらなかった。
多くの企業が軒並み大打撃を受けているなかで、報告を見る限り一条ではこの事件に関する被害は少ない。
花音がテロが発生する前から、当該地域の規模を縮小していたからだ。
他社が次々と事業拡大していた地域から花音が独断で撤退を決めた時には、ずいぶんと反発があったものだ。だが、おかげで一条に被害はほぼ無いといえる状況だ。
やはり、花音の時代の潮流を読む力は神がかり的なほどだ。それは上に立つ者のとしての必須能力であり、何より琴羽との決定的な違いであると思っている。