罪か、それとも愛か
「あの頃は萌音がいたのに?」
「うん。俺にとって恋愛はその時さえ楽しければいいものだった。萌音も同じタイプだったから付き合ってた。
あの頃俺はとにかく貧乏な生活から脱出したくて。なかばヤケになって五嶋の家に入ったものの、礼儀作法やら窮屈でさ。
社会勉強だからなんて言い訳にして一人暮らしして、五嶋家になるべく寄り付かないようにしてた」
学生時代の五嶋はいつも明るく笑っていたイメージしかない。そんな葛藤を抱えていたなんて知らなかった。
「でもさ、今ならわかる。育った環境の違いって顕著だよな。いくらとりつくろってみても、化けの皮なんてすぐにはがれる。思えばあの頃から琴羽は違ってた。小さな仕草の一つ一つに品があった。俺が求められていた礼儀作法はこれなんだって痛感したよ。今でも変わらない」
二人とも、目の前の器は空になっていた。五嶋はその器を指さす。
五嶋のまわりには食べこぼしが散乱している。しかも、小鉢はもとの位置が分からなくなり、お重に戻せなくなってぐちゃぐちゃに重ねてあり、汚れた箸は器の中で転がっていた。
一方琴羽といえば、食べこぼしなどなく、器もきれいだ。使用後の箸もきちんと整えられている。
「うん。俺にとって恋愛はその時さえ楽しければいいものだった。萌音も同じタイプだったから付き合ってた。
あの頃俺はとにかく貧乏な生活から脱出したくて。なかばヤケになって五嶋の家に入ったものの、礼儀作法やら窮屈でさ。
社会勉強だからなんて言い訳にして一人暮らしして、五嶋家になるべく寄り付かないようにしてた」
学生時代の五嶋はいつも明るく笑っていたイメージしかない。そんな葛藤を抱えていたなんて知らなかった。
「でもさ、今ならわかる。育った環境の違いって顕著だよな。いくらとりつくろってみても、化けの皮なんてすぐにはがれる。思えばあの頃から琴羽は違ってた。小さな仕草の一つ一つに品があった。俺が求められていた礼儀作法はこれなんだって痛感したよ。今でも変わらない」
二人とも、目の前の器は空になっていた。五嶋はその器を指さす。
五嶋のまわりには食べこぼしが散乱している。しかも、小鉢はもとの位置が分からなくなり、お重に戻せなくなってぐちゃぐちゃに重ねてあり、汚れた箸は器の中で転がっていた。
一方琴羽といえば、食べこぼしなどなく、器もきれいだ。使用後の箸もきちんと整えられている。