罪か、それとも愛か

二人の関係

五嶋と別れ、琴羽はタクシーで自宅へと向かった。


ーー結婚、か。

『一条琴羽』でいることが自分の生き方だ。
花音と共に一条の発展に貢献していく。それが琴羽の未来だ。


車の窓から、都会の夜景が見える。そのきらめきをぼんやりと眺めながら琴羽はコツンと窓におでこを当てた。
ひんやりとした硬いガラスが、悩みで重くなった頭を支えてくれる。


何とか五嶋を救ってあげたいと思う。
今、五嶋商事が危機的状況にあるのは東南アジアでのテロ事件が原因だ。
じゃあ、それが一条だったら?一条商事の主要取引先で同じような事件が起きたら、どう対応したら正解だろう。

自力での回復が厳しい状況で、救える方法があるのなら土下座でも結婚でもなんでもする。
そんな五嶋の気持ちは痛いほどよくわかる。

恋愛感情からの結婚ではなく五嶋を救うための書類上の結婚ならば、『一条琴羽』として生きていく妨げにはならないかもしれない。しかも、五嶋商事を容易く手中にできる。
考える余地はあると思う。

頭は冷静に損得勘定をしている。
その一方で、胸の奥がチクリ、と痛んでいた。
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